- 坂内 徳明
炭水化物の基礎理解
最終更新: 2020年8月20日
鳥取県にある理学療法士が運営するパーソナルジム・健康な体作りの空間
「PT Body Lab.」の坂内です!
今回のテーマは「炭水化物」です!
目次
1.炭水化物とは
2.食品表示での理解
3.糖質の基礎知識
4.糖質の種類
5.単糖類
A グルコース
B フルクトース
C ガラクトース
6.二糖類
A スクロース
B ラクトース
C マルトース
D トレハロース
E セルビオース
7.小糖類(オリゴ糖)
A 乳糖果糖オリゴ糖
B フラクトオリゴ糖
C ガラクトオリゴ糖
D イソマルトオリゴ糖
8.多糖類
A デンプン
B グリコーゲン
C セルロース
D アルギン酸
9.糖質の摂取量
10.糖質制限の目安
11.食物繊維
A 水溶性食物繊維
B 不溶性食物繊維
炭水化物とは
3大栄養素の一つ。
単糖から構成される有機化合物の総称。
有機化合物・・・炭素を含む化合物の多く。単純な作りの二酸化炭素などは含まれない。
ここでの「有機」は「生物由来の」という意味がある。
糖質と食物繊維を合わせた総称でもある。
糖質は体のエネルギーになる炭水化物。
食物繊維は消化吸収されずエネルギーにならない炭水化物として分けることができる。
構造上、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)からなる。多くは「CmH2nOn」で表される。
分子式の見方・・・上記のmやnに数字が代入されることによって炭水化物中で種類分けされる。

食品表示での理解
基本的には食品表示の
炭水化物→糖質がほとんどを占めるため、一般の理解としては=糖質量で問題ない。
また、食物繊維の記載があるものがほとんどのため
炭水化物量から食物繊維量を引いたものが「糖質量」という認識で良いと考える。
糖質の種類
糖質には単糖類、二糖類、小糖類、多糖類がある。
単糖
単糖はそれ以上分解(加水分解)できない糖類。糖質の最小単位で水溶性である。
加水分解・・・化合物と水が反応して分解されること
靴はこの加水分解が起きるため、雨の日に履いたり、湿度が高い場所に置くと
劣化しやすい。
強い甘みがあり、消化吸収が速いため、血糖の急激な上昇を生じさせる。
単糖はグルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトースの3種類に分けられます。
A グルコース(ブドウ糖)
グルコースは単純な糖で血糖として全身を循環している。
細胞内呼吸(エネルギーを作り出す過程)において最も重要なエネルギー源。
動物はグリコーゲン、植物はデンプンとして体内に貯蔵する。
生成する際はデンプンを加水分解して生成することが多い。
体内では小腸で分解されてグルコースとなり、そのまま小腸で吸収される。
体内のエネルギーとして使用され、特に脳ではグルコースのみがエネルギー源として利用されています。
B フルクトース(果糖)
フルクトースは全ての糖の中で最も多く水に溶けている。
蜂蜜、果実、果物的野菜(メロン、スイカ)などの多く含まれるため果糖とも言われる。
グルコースより約10倍も糖化反応に使用されやすいと言う性質を持つ。
糖化反応・・・酵素を用いず、タンパク質や脂質と糖がくっつく反応。
近年は老化の原因に挙げられる。
フルクトースは天然に存在する糖の中で最も甘く、コストが低いため商業利用されやすい。
グルコースに比べ満腹中枢への働きが薄く、満腹感を与えにくいという研究結果もある。
※グルコースとフルクトースが結合すると、よく使うスクロース(砂糖)になる!!
C ガラクトース
ガラクトースは乳製品、テンサイ、ガム、粘液などに見られる。
また、生体内でも合成される。
二糖
二糖は単糖が2分子(2つ)が結合して1分子(1つ)になった形である。
一般的に料理に用いる砂糖はこの二糖の一種である。
種類はたくさんあるが主な二糖として
スクロース(砂糖・ショ糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)、トレハロース、セルビオースが挙げられる。
スクロース(砂糖・ショ糖)
一般的に知っている砂糖がこれにあたる。
グルコース+フルクトースで結合し生成される。
サトウキビやテンサイなどから採取される。
この砂糖の結晶を大きくしたものが氷砂糖になる。
また約170℃で加熱すると褐色変化しカラメルになる。
消化経路は小腸でサッカラーぜという酵素に分解されて、そのまま小腸で吸収される。
ラクトース(乳糖)
砂糖の約40%程度の甘みしかない。
グルコース+ガラクトースで結合し生成される。
哺乳類の乳汁に含まれている。
消化経路は小腸のラクターゼという酵素によって分解・吸収される。
また、乳児は肝臓でラクトースをグルコースに変換して利用する。
乳糖不耐症・・・ラクトース(乳糖)を分解するラクターゼが十分働かず、消化器に生じる症状
多くは消化不良や下痢などの症状が出る。
哺乳類は離乳するとラクターゼの活性が低下するようになっている。
牛乳を飲むとお腹を壊しやすい人の多くはこれにあたる。
マルトース(麦芽糖)
身近なもので言うと、水飴の主成分で多くは大麦から生成される。
グルコース+グルコースで結合し生成される。
デンプンに麦芽自体が持つβアミラーゼ(消化酵素)が作用し、分解されて生成される。
グルコースに比べてメイラード反応が生じにくく、加熱による着色や結晶化が起こりにくい。
メイラード反応・・・糖とタンパク質を加熱したときに見られる褐色反応。
トレハロース
デンプンを加水分解して生成される。
団子や餅が時間が経ったときに硬くなるのを防ぐ効果があり、デンプン食品に使用される。
グルコース+グルコースで結合し生成される。
熱や酸に強く、高い安定性や保湿効果、タンパク質の変性抑制効果などがあり、様々な加工食品に応用されている。
日本で抽出方法が確立されて以来、一気に価格が落ち、求めやすく、身近なものになった。
セロビオース
セルロースを加水分解して生成される。
グルコース+グルコースで結合し生成される。
水に溶けにくく、甘みもわずかである。
小糖(オリゴ糖)
小糖は単糖が3個〜10個結合したものである。
「2個以上」とも定義され、二糖との境界では議論が分かれる。
同じように十個という数も多糖との境界がはっきりしていない。
小糖はオリゴ糖とも言われる。
①消化吸収されずに腸まで届く
②ビフィズス菌などの餌になり、乳酸菌を増やすことで腸の働きを活発にさせる。
③悪玉菌の餌にはならない
オリゴ糖は1日3g取り続けるのが良いとされていますが、バナナ10本分にも相当するのでプロテインバーなどの専門食品がおすすめです。
乳糖果糖オリゴ糖
ショ糖と乳糖を合わせたオリゴ糖。
カロリーは砂糖の半分程度、甘さは1/3程度である。
フラクトオリゴ糖
ショ糖に果糖が1〜3個結合したオリゴ糖。
プロテインバーや玉ねぎやバナナに多く含まれる。淡い甘みで難消化性です。
ガラクトオリゴ糖
ガラクトースが主成分で糖が2〜6個結合したオリゴ糖。
あっさりしていて、難消化性です。
イソマルトオリゴ糖
発酵食品に多く含まれ、とうもろこしのデンプンなどから生成する。
オリゴ糖の中ではカロリーが高く、消化性である。
多糖類
単糖が複数(10個以上)結合したもので小糖との境界がはっきりしていない。
一般的には水溶性だが、不溶性のものや、ゲル化するものもある。
動物は多糖類の一種である「デンプン」を消化して、エネルギー源とする。
また、消化されない多糖を「食物繊維」として扱う。
ゲル化する多糖類は増粘安定剤という食品添加物として幅広く使用されている。
以下は有名な多糖類である。
デンプン
グルコース(αグルコース)が重なってできており、グルコースとは異なる特性を持つ。
多くの植物はこのデンプンにグルコースを貯める(人はグリコーゲンに貯める)
植物の球根や根に多く含まれる。
デンプンの特性はその植物によって大きく左右される。
e.g)代表的なデンプン
片栗粉:馬鈴薯(じゃがいも)を原料としている。
コーンスターチ:とうもろこしを原料にしている。
デンプンの構造はアミロースとアミロペクチンによって構成される。
アミロースの性質:熱水に溶ける。分子量は小さい。
アミロペクチンの性質:熱水に溶けない。分子量が大きい。アミラーゼで加水分解する。
デンプンの消化経路は口で唾液アミラーゼに分解され、マルトースやデキストリンになる。
そして胃液でアミラーゼの活性が失われ、十二指腸に送られる。その際、膵臓から膵アミラーゼが放出され、二糖類のマルトースまで分解される。
そして省庁の酵素により単糖(グルコース)まで分解されて小腸で吸収される。
各植物によるデンプンの性質
とうもろこし:白く、吸湿性は少ない。タンパク・脂質含量は多い。安価で品質も安定。
小麦:品質のばらつきが多い。冷却時の粘度が高くなる。粘度は安定している。
米:化粧品や打ち粉に利用されることが多い。
じゃがいも:強い粘着力や膨張力がある。春雨やオブラートの原料になる。
キャッサバ:タピオカ粉として広く認知されている。粘度が高く、のりなどに使用される。
グリコーゲン(糖原)
動物における貯蔵多糖。動物デンプンとも呼ばれる。
グリコーゲンは主に肝臓と骨格筋で合成され、余ったグルコースを一時的に貯蔵する。
脂肪やアミノ酸と比べて、グルコースは直接グルコースに分解できる点が良い。
しかし、多くは貯めておけない為、一時的な貯蔵に過ぎない。
肝臓では約100g(肝臓質量の約8%程度)のグリコーゲンを蓄えることができる。
筋肉では約300g(筋肉質量の約2%程度)のグリコーゲンを蓄えることができる。
このうち、肝臓のグリコーゲンだけが他の臓器でも利用することができる。
グリコーゲンの合成・分解に関わる臓器とホルモン
甲状腺:サイロキシン
膵臓:グルカゴン・インスリン
副腎:アドレナリン
スポーツ分野でグリコーゲンの効率的貯蔵を行う手段を
「グリコーゲン・ローディング」という。
セルロース(繊維素)
植物細胞の細胞壁や植物繊維の主成分で、地球上で最も多い炭水化物。
グルコース(βグルコース)が重なってできており、グルコースの性質とは異なる。
セルロースは人の消化酵素では分解されない。
アルギン酸
多糖類で、食物繊維の一種。
市販のアルギン酸は全て海藻からの抽出で生成されている。
主に増粘剤、安定剤、ゲル化剤などで食品添加物として利用されることが多い。
糖質の摂取量
糖質は1g→4Kcalのエネルギー量がある。
摂取量の目安として、
運動量の少ない方の成人男性は約330g程度
成人女性は約270g程度と言われています。
一般的に糖質を含む炭水化物は食事の50〜60%を占めます。
1日に必要なカロリー✖️炭水化物の割合➗4=1日の摂取目安
となるので覚えておくと便利です!
糖質制限系ダイエットでの目安摂取量
糖質制限ダイエット:1食あたり20〜40g
間食は10gまで
1日あたり70〜130g
※個人差がかなり影響します。
糖質必要量:1日最低でも100g
※個人差がかなり影響します。
食物繊維
人の消化酵素では分解できない炭水化物の総称。多糖類に分類されるものが多い。
多くは植物の細胞壁を構成しており、植物、海藻、キノコ類などに多く含まれる。
普段食べている食物繊維の大半は不溶性で、そのほとんどがセルロースである。
1gあたりのカロリーは糖質(4g)の半分かそれ以下である。(0〜2g)
食物繊維は酵素では分解できない為、大腸の腸内細菌で分解され、食事から長時間たって初めてエネルギーに変えられる性質を持つ。
大きく、水溶性と不溶性に分けられる。
水溶性食物繊維(SDF)
ネバネバしたゲル状の食物繊維で食物をゆっくり運び、糖の吸収を緩やかにする。
発酵性があり、整腸作用が見込める。
また、コレステロールや胆汁酸を吸着し、体外へ排出する効果もある。
【代表的なもの】
・ペクチン
・イヌリン など
・水溶性食物繊維が多く含まれている食品
海藻類、こんにゃく、果物、里芋、オーツ麦など
不溶性食物繊維(IDF)
糸状や多孔質の物が多く、ボソボソ、ザラザラしている水に溶けない食物繊維。
保水性が高く、腸の蠕動運動を活発化し、便通を改善する効果がある。
また、自然と咀嚼回数が多くなる食品なので満腹中枢を刺激し、食べ過ぎを防げる。
【代表的なもの】
・セルロース(上記記載あり参照)
・キトサン など
・不溶性食物繊維が多く含まれている食品
穀類、野菜、キノコ類、海藻類、果実など
参考文献
赤坂 甲治, 他:よくわかる生物基礎+生物, 株式会社 学研プラス,2016年.
二見 太郎, 他:二見太郎の早わかり化学, 株式会社 学研プラス,2020年.
辰巳 敬, 他:新編 化学基礎,数研出版株式会社,2015年.
戸塚 雄武:生活学Navi 資料+成分表 2012, 図書印刷株式会社,2012年.
栗原 毅:ゼロからわかる疾患別検査値の読みこなし,成美堂出版,2016年.
満尾 正:食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術,アチーブメント出版株式会社, 2020年.
牧田 善二:医師が教える食事術 最強の教科書 20万人診てわかった医学的に正しい食べ方68,ダイヤモンド社,2018年.
牧田 善二:医師が教える食事術 実践バイブル2 20万人診てわかった医学的に正しい食べ方70,ダイヤモンド社,2019年.
庵野 拓将:科学的に正しい筋トレ 最強の教科書,株式会社KADOKAWA,2019年.