- 坂内 徳明
脂質の基礎理解
最終更新: 2020年8月20日
鳥取県にある理学療法士が運営するパーソナルジム・健康な体作りの空間
「PT Body Lab.」の坂内です!
今回のテーマは「脂質」です!
目次
1.脂質の種類
A 脂質
B 脂肪と脂質の違い
C 油と脂の違い
D 脂肪酸
E コレステロール
F HDLとLDL
G グリセリン
H 中性脂肪
I リン脂質
2.脂肪酸の種類
3.脂肪の吸収メカニズム
A リポタンパク質の種類
4.脂質代謝のメカニズム
5.中鎖脂肪酸の基礎理解
6.脂肪酸の鎖状構造と分類
7.MCTオイルとは
8.参考文献
1.脂質の種類
A 脂質
脂肪酸や油、グリセリン、コレステロールなどが合わさった総称です。
B 脂肪と脂質
この2つの言葉は定義付けが曖昧なまま使用されることが多いが、脂質とは栄養学上の呼び名で、脂肪は一般的な呼び方と解釈することができる。
C 油と脂
一般的には液体で常温のものを「油」
常温で個体のものを「脂」と言います。
この二種を合わせて「油脂」と言います。
D 脂肪酸
脂質を構成している主成分。脂質の約90%を占める。
化学的には炭化水素にカルボキシル基がついたものです。
単素数の違いで中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸などに分類されます。
この脂肪酸が様々な形の物質と結合することで脂質を形成しています。
脂肪酸の役割として
・活動のエネルギー源となる
・細胞膜、ホルモン、核膜などを構成している
・脂溶性ビタミン(DAKE)の吸収を促進する。
などがあります。
E コレステロール
全身に広く分布する脂肪の一種で、胆汁の材料になります。
悪い印象がついていますが、脳神経、筋活動、ホルモン機構などに不可欠です。
血管壁に過剰に付着すると動脈硬化を引き起こします。
コレステロールは一般的にいう「善玉」と「悪玉」によって各器官に運ばれます。
F HDLとLDL
HDL(善玉)は「高比重リポたんぱく」の略称です。
役割としては、全身の細胞から余ったコレステロールを回収し、肝臓へ運びます。
LDL(悪玉)は「低比重リボたんぱく」の略称です。
役割としては、肝臓から全身の細胞にコレステロールを運びます。
LDLは「悪」とついていますが必ず必要な存在です。
G グリセリン
脂肪分から摂取できるネバネバした液体。
グリセリンは3つの結合部を持っており、3つのうち脂肪酸が何個くっついているのかによって呼び名が異なります。
3つの脂肪酸がくっつくグリセリンを「トリグリセリド」
2つの脂肪酸がくっつくグリセリンを「ジグリセリド」
1つの脂肪酸がくっつくグリセリンを「モノグリセリド」
と言います。
こうしてグリセリンに脂肪酸がくっついた状態を
「グリセリン脂肪酸エステル」と言います。

H 中性脂肪
中性脂肪とは上記で挙げた、「グリセリン脂肪酸エステル」のことを指します。
動物の中性脂肪は常温で個体の物が多いです。
グリセリン脂肪酸エステルは3種類ありますが、中性脂肪のほとんどがトリグリセリドです。
I リン脂質
構造上、リン酸エステルを持つ脂質の総称。
細胞膜の主成分で人体に欠かせない脂質です。
体内で脂肪が運搬・貯蔵される際にタンパク質との結合を助ける役割があります。
水と油分の両方をなじませる性質があり、血液中にも存在します。
リン脂質が不足すると、細胞膜の正常な機能が破綻し、血管にコレステロールが溜まるなど、動脈硬化や糖尿病を引き起こす原因になります。
2.脂肪酸の種類
脂肪酸は以下のように分けることができます。

3.脂質吸収のメカニズム
食事から摂取した脂質は血液に溶け込めません。
経口摂取した脂質は十二指腸で胆汁によって乳化され、胃や膵臓のリパーゼの作用によって脂肪酸とモノグリセリドに分解されます。
乳化・・・水と油が界面活性剤などなんらかの仲介をを通して交わること。
その後、グリセリンは水に溶けやすいため小腸の絨毛上皮細胞から吸収されます。
一方、脂肪酸とモノグリセリドは胆汁酸の働きによってミセルという親水性の小さい分子によって腸管から吸収されます。
ミセル・・・界面活性剤の濃度がある一定以上になった時にできる多数の分子の集合体
吸収された後、再び脂肪酸とグリセリンが中性脂肪に再合成されます。
さらに血漿中でアポタンパク質と脂質(中性脂肪)が結合しカイロミクロンという「リポタンパク質」となります。
グリセロール・・・グリセリンの旧称
アポタンパク質・・・タンパク質から一部の構造を取り除いた残りの構造
カイロミクロンは毛細リンパ管、リンパ管、胸管を経由して血液中に入ってから、肝臓や脂肪細胞に蓄積されます。
リポタンパク質はタンパク質と脂質の割合によって種類が分かれます。
A リポタンパク質の種類
上から順に中性脂肪が占める割合が多くなります。
カイロミクロン:中性脂肪がほとんどを占める。脂質を末梢組織や肝臓へ運ぶ。
VLDL:中性脂肪を肝臓から筋肉や脂肪組織へ運ぶ。
LDL:肝臓で作ったコレステロールを全身に運ぶ。悪玉コレステロールともいう。
HDL:全身の細胞で余ったコレステロールを肝臓に運ぶ。善玉コレステロールともいう。
4.脂質代謝のメカニズム
体の中のグリコーゲン(糖)を使い切ると、体の中に蓄えてある脂肪が分解されます。
まず蓄えられた中性脂肪(グリセリン脂肪酸エステル)はグリセロール(グリセリン)と脂肪酸に加水分解されます。
脂肪酸はアルブミン(タンパク質)と結合し、血液中に放出され各器官でエネルギーとして利用されます。
グリセロール(グリセリン)はアセチルCoAを経て解糖系に入り、エネルギーを産生したり、中性脂肪を再合成したりします。
5.中鎖脂肪酸の基礎理解
脂肪は体の中に蓄えられるというイメージがありますが、脂肪の中には体に蓄積されにくいものもあります。
その脂肪を「中鎖脂肪酸」と言います。
この中鎖脂肪酸は普通の油と比べて分解されやすく、素早くエネルギーに変わる性質を持っています。
そのスピードは一般的によく口にする油(長鎖脂肪酸)に対して約4倍も分解速度が速いと言われています。

6.脂肪酸の鎖状構造と分類
油を構成するのは脂肪酸であり、脂肪酸は分子が鎖状に配列されています。
その鎖状に並んだ分子の長さを「中鎖」「長鎖」と言っています。
一般的な油は脂肪酸の分子の数が多いため長く鎖状の構造になります。
このため「長鎖脂肪酸」と呼ばれています。
「中鎖脂肪酸」は脂肪酸の分子の数が長鎖脂肪酸に比べて約半分と言われています。
また、中鎖脂肪酸よりさらに炭素数が少ない「短鎖脂肪酸」も存在します。

短鎖脂肪酸が多く含まれる食品
・酢
・牛乳
・乳製品 など
中鎖脂肪酸が多く含まれる食品
・ココナッツオイル→約60%が中鎖脂肪酸
・パーム油→約60%が中鎖脂肪酸
・牛乳→約6%が中鎖脂肪酸
・母乳 など
長鎖脂肪酸が多く含まれる食品
・サンフラワー油
・コーン油
・キャノーラ油
・大豆油
・オリーブオイル
・魚油
・肝油
・ココアバター など

7.MCTオイルとは
Medium chain Triglyceride=MCT は中鎖脂肪酸を意味している単語です。
MCTオイルとは中鎖脂肪酸を含む食品から抽出した、100%中鎖脂肪酸の油です。
歴史的には手術などの消化器能力低下の際の栄養摂取のために長く医療現場を中心に使われていました。
MCTオイルの長所
・消化吸収が早い
・エネルギー効率が良い
・油臭さが少ないため風味を阻害しない
・酸化、劣化しにくい為、常温保存が可能
MCTオイルの短所
・普通の脂質とカロリーは変わらないので摂り過ぎに注意が必要
・加熱すると煙が出やすい
8.参考文献
赤坂 甲治, 他:よくわかる生物基礎+生物, 株式会社 学研プラス,2016年.
二見 太郎, 他:二見太郎の早わかり化学, 株式会社 学研プラス,2020年.
岡庭 豊, 他:病気が見えるvol.1 消化器 第5版, 株式会社 メディックスメディア,017年.
辰巳 敬, 他:新編 化学基礎,数研出版株式会社,2015年.
戸塚 雄武:生活学Navi 資料+成分表 2012, 図書印刷株式会社,2012年.
満尾 正:食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術,アチーブメント出版株式会社, 2020年.
牧田 善二:医師が教える食事術 最強の教科書 20万人診てわかった医学的に正しい食べ方68,ダイヤモンド社,2018年.
牧田 善二:医師が教える食事術 実践バイブル2 20万人診てわかった医学的に正しい食べ方70,ダイヤモンド社,2019年.
庵野 拓将:科学的に正しい筋トレ 最強の教科書,株式会社KADOKAWA,2019年.